「陸の生き物は、冬は眠るんですね……」
「ええ。冬眠、というんですね。とても興味深いです」
その陸の生き物の習性を知ったのは、訓練学校だった。聞けば、ある種の浅瀬の魚にも見られる行動らしい。
「それにしても、寒くなると活動しなくなるなんて……深海育ちの僕らにはピンときませんね」
そうジェイドは笑っていた。焼け焦げになるかのような夏の温度を知る前のことだ。
◇
ピピピとアラームが鳴って、アズールは目を覚ました。冬の朝だ。空気が鋭いまでに澄み渡っている、冷え冷えとした朝。
横を見る。すやすやとまだ眠っているウツボがいる。そう、昨夜はそういう夜だった、と思って、その頬に口づけを落とす。
さて、ホリデーだから特に何も予定はないが、ジェイドが目を覚ますまで読書でもしていよう。そう思って起き上がったところ、ぐいと横から毛布を引っ張られた。
また横を見る。ウツボは目を閉じて丸まっている。ぐい、とまた毛布を引っ張られる。随分と力強い。
「……お前、起きてるだろ」
「……んふふ。すみません、つい。寒くて」
「はあ。ウツボのお前が、この程度で寒いっていうんですか?」
全くもってウツボらしくない。そういうアズールも寒くなってきて、本を取るのを諦めて毛布の中に再度収まる。
ふふ、とひそやかに声を立ててジェイドは笑って、三日月型に目を細めた。目尻は眠気と幸福でとろけている。
「……アズール、僕、陸の生き物の温度に慣れちゃったみたいです」
するするとこちらに擦り寄ってきて、ぬくぬくふにゃりとジェイドは笑った。