望みを叶える

 そのアズールのバースデーインタビューを、ジェイドもすぐ傍で聞いていた。

    

 ねえ、アズール。僕は貴方の望みなら、なんだって叶えてあげたいんです。

 それは、貴方のその望みは、僕では不可能なことですか。無理なんでしょうね。僕にはヒューマノイドの彼と匹敵するだけの頭脳はないですし、彼を作り出すことができるだけの天性の才能もないですし、僕はどうやったって貴方と同郷ですから、貴方と全く違う視点も持ち合わせていませんし。

 貴方の役に立てるだけの莫大な財産や幅広い人脈なんてものも、持っていませんし。
 貴方にとって使い勝手のいいユニーク魔法だって、持っていませんし。
 僕は僕でしかないから、いくら貴方がこれみよがしにため息をついてみせても、山に行くことをやめることも、キノコの栽培をやめることもできませんし。

 ねえ、アズール。僕は貴方の望みなら、なんだって叶えたいんです。
 でもきっと、なんだって、ってわけにはいかないんでしょう。知っていますよ、僕もそのくらい。子どもじゃないんですから。

 でも僕は、貴方の望みをなんだって叶えてみせたかったのに。……いえ、違いますね。
 貴方の望みを叶えるのは、僕でありたかったのに。

 貴方もフロイドも、こうやって随分と遠くへと、僕の手では届かない望みを叶えに行ってしまうんでしょうね。
 そうして、僕から遠い遠いところで、僕ではない誰かとよろしくやるんでしょうね。
 そんな、僕の知らないところで進んでいく物事が、これから増えるんでしょうか。
 ……貴方達は、別にジェイドにそんなことは求めていないだなんて、それはそれは残酷なことを仰るのかもしれませんが、僕はときたま、そのせいで貴方達と一緒に歩けなくなるんじゃないかって、とても不安になるんです。

 だからアズール、僕は努力しましょう。
 貴方達が取る手は、最後にはこの僕の手なんだって、貴方達に知らしめてみせます。
 貴方達が帰ってくる場所はこの僕のところなんだって、貴方達に知らしめてみせます。
 だからどうか、そのときまで僕を視界から外さないで。
 僕を置いていかないで。
 貴方達に必要とされなくなることが、僕は何よりも耐えがたい。

 ……たまに。極々たまに、ですよ。
 もしも貴方が僕だけを見てくれたら、なんて思うんです。
 でも、そんな貴方は、もはや貴方ではないんでしょうから、そう考えてしまったことは僕だけの秘密にしておきましょう。

  *

……そんなことを考えていたことがあるんですか?」
「ええ、お恥ずかしながら」
「馬鹿だな」
「馬鹿、なんでしょうか。でも、僕は今でも、たまにそんなことを考えるんですよ」
……本当に馬鹿だな……

 はあ、とこれみよがしにため息をついて、彼はジェイドの頭を撫でた。

「お前の代わりなんて、どこにもいやしないのに」